「ウイルスがいてこその進化」
生物の進化は、DNAの交配、突然変異、自然淘汰によるものだと書いた。
ところがこれだけでは、うまく進化が進まないことがわかっている。
もっと長い時間をかければそれでも進化できるのかもしれないが、なんたって、地球の寿命(っていうか太陽の寿命)は残り半分、あと約50億年程度しか残っていない。あまり、悠長な進化はしていられない。
面白いことに、DNAの交配、突然変異、自然淘汰のアルゴリズムを元にした「遺伝的アルゴリズム」というAIでも、同じ現象が起こる。突然変異は、せっかく獲得した優秀な遺伝子を壊してしまうので、それを避けるために突然変異率を0%にするとAIの学習の「進化」がうまくいかない。
進化のアルゴリズム以外に、神様は「同じ動物間でしかDNAの交配はできない」というルールを作った。いくらライオンの強さがほしいからと言ってもライオンと人間の間では子供はできない。
ゲームとして考えたときにも都合がよい。よく「交配」要素を入れると生まれるキャラの種族の数が爆発してドツボに落ちることがある。
例えば、10種類のキャラがどのキャラとの交配できるとすると、10x10=100種類のキャラが生まれることになる。ゲームで言えば100種類作らないといけないことになる。さらに次の世代では、単純計算で100x100種が誕生することになり、世代が進めばは指数関数的に増えていってしまう。
地球上には〜3000万種程度の種類の生き物がいると言われている。哺乳類に限っても〜5,000種程度いると言われている。哺乳類同士なら交配OKよとすると誕生する動物は次の世代だけでも5,000x5,000=25,000,000種類となる。次の世代では、これはさすがにキャラ担当の神様もうまくないと思ったに違いない。
近い種族間の交配を除いて、このルールは厳密に守られている。その縛りが進化のダイナミクスを奪っている。人間同士、ほぼ同じDNAである。少し混ぜたり変えたりしたところで、とんでもない変化が起こるとは期待しにくいということだ。実際、人と人のDNAの違いは0.1%、人間にもっとも近いと言われるチンパンジーの間での違いは1.2%程度と言われている。素人目に見てもその部分を混ぜ合わせたりしてもたかがしれてそうというのは、なんとなくわかる。
もっとも、逆に、0.1%でこんなに違いが出るのか…とアスリートやイケメンを見て愕然ともしているのだが。
さて、生き物を自律的に進化させる仕組みを考えた神様も、これでは進化が冗長になって(ゲームとして)まずいと感じたのか、特別ルールを作った。
「ウイルスは、生物間をまたいでDNAのやりとりをしてよい」
この特別ルールを理解してもらうためには、ウイルスが宿主のDNAの一部を持ち去ってしまう仕組みを知ってもらう必要がある。
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