神様のゲーム#5 - Morikatron Engineer Blog

「神様はムダを嫌う」

なんで塩基が3種類でも5種類でもなく4種類なのかを考える。

先に書いたように、体内で作るアミノ酸は20種類ある。遺伝子は、これら全てのアミノ酸を作れるように書かれていないといけない。

これまた先に書いたように、塩基３つで１つのアミノ酸を定義している。

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もし塩基の種類が２種類なら、AAA=アミノ酸１、AAB=アミノ酸２、…BBB=アミノ酸８と、2x2x2=8種類のアミノ酸しか定義できない。

塩基が3種類なら３^3=27種類、4種類なら４^3=64種類、5種類なら5^3=125種類のアミノ酸を定義できることになる。

じゃー、塩基3種類で十分じゃんとなりそうだが、塩基の種類は奇数では具合が悪い事情がある。

よく「二重らせん構造」という言葉をお聞きになったこともあると思う。DNAはふつう二重になってねじれている。らせんであることは、今のテーマでは関係しないので二重であることに注目する。

二重というのは、2本のビーズアクセサリーが、お互いの玉同士がくっつけて、2本で1本になっているイメージだ。

4色の玉はどれとでもくっつくわけではない。同じ色同士の玉がくっつくわけでもない。

玉をA,B,C,Dなんて書くとかえって混乱を呼びそうなので、正式な名称で表すことにする。4色の玉（塩基）は、「アデニン　頭文字A」「シトシン　頭文字C」「グアニン　頭文字G」「チミン　頭文字T」である。ちなみに古い言語？であるRNAは「チミン」の代わりに「ウラシル　頭文字U」が使われている。

さて、塩基のくっつきかただが、次のようなルールがある。アデニン（A)はチミン（T)と、シトシン（C)はグアニン（G)とくっつく。

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ゲームデザイン的に言えば、ユーザーはそんなめんどいこと覚えないぞ。なんでおんなじ色同士ってことにしない？と思ってしまうが、そこには大人じゃなく物理の都合がある。

このあと詳しく説明するように、DNAはいろいろなタイミングで2重状態を一時的にほぐす必要がある。ほぐしてまたすぐにくっつく必要もある。

つまり玉と玉に粘着力が生まれなくてはいけないのと同時に、その粘着力はあまり強固であっても困るのである。それを可能にするのが、A-T、C-Gのつながりのみなのである。これは塩基間で水素結合ができるかどうかに由来するが、このあたりの話は割愛する。

ペアが厳密に決まっているということは、塩基の種類が奇数だと具合が悪いくなる。奇数種類だとペアがつくれない塩基がでてしまうからだ。

だから、塩基の種類は必ず偶数種でないといけない。

偶数で、20種類のアミノ酸を定義できる最小の種類が4種類（４^3=64種類）というわけだ。

2種類の塩基種×5つの塩基で１つのアミノ酸を定義するという方法はなかったのかという疑問が残る。2^5=32種類でこれでも20種類のアミノ酸を定義できるからだ。

しかし、となると１つのアミノ酸を指定するのに5つの塩基を使ってしまうことになる。その分、DNAの全長が長くなる。現状は１アミノ酸は3個塩基で定義しているから、単純計算すると、30億塩基×5/3＝50億塩基になってしまう。

神様はムダをきらう。ゲームデザイナーもそうだろう。ちがうかな、自分だけかな？

塩基の種類も塩基の総量もなるべくダイエットしたいと思っている。

その結論が、塩基の種類は4種類、３つの塩基で１つのアミノ酸を定義するということだ。

なんとエレガントな仕様！